2004年 05月 10日

「甘ずっぱく、ちょっと胸キュン青春プレイバック・私小説風」      The Doors/The Doors

a0011442_2918.jpg   またしても長距離出張ドライブ。本日はこれ、ツボにはまった。突然ですけど思い出モード入ります!

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 上京して代々木で予備校生をしていた頃。満員電車に揺られながらウォークマンで毎日むさぼるように聴いていたのがドアーズ。
初めて経験する梅雨時のどんより湿った空気、先の見えない不安、根拠のない自信と自信のなさ。その時の憂鬱な気持ちにかなりフィットしていた。 
 ある朝、まだひと気のない通学路をおみやげで貰ったドアーズのバッジをつけていい気になって歩いている私の脇を、やはりドアーズのロゴの入ったバッグ(多分手づくり)を背負ってさっさと追い抜いていく少年がいた。
 同じ予備校に通う一つ上のあの人。反抗的なポーズとは裏腹に、目の中にいたずらっぽい陽気さが躍るやんちゃなパンク少年。私が曇天と日陰の中を右往左往している時に、太陽の光を浴びてのびのびとしているように見えた。当然、まぶしい。
 
問題は、この屈託のない少年が、実にきりりとした美少年だったということだ。私が憧れるのは、彼自身?それともその美しさゆえ?私ってミーハーなだけなの?(今となっちゃどーだっていいようなことだが、その時は結構まじめに考えちゃったりするのである。)なんだか近づき難かった。

 その彼もドアーズが好きなのである。これはゆゆしき、いや感動的な大発見だ。いっぺん話をしてみたい。できることならおともだちになりたい!向こうも私を知らない訳でもないみたいだし…。

 しかしオクテ少女の悲しさよ、たまに目があってもどうしていいのやらわからなくなって、ついついプイとふくれっ面で横を向いてしまうのである。そういうことが何度か続くうちに、エレベーターに乗りあわせても不機嫌な無表情で無視されるようになってしまった(あるいは、はなから眼中になど入っていないのだ)。
そうこうしているうちに長く短い浪人生活にもピリオドを打ち、私はめでたく女子大へ。

 その年の秋のこと。友人の大学祭に誘われてたまたまふらりと立ち寄ったとある模擬店、なんと店番をさせられていたのは他ならぬかの君であった。念願かなって初めて口を聞くことになった。
驚いたことに、その日の彼はそれまでの不機嫌さからは信じられないくらい優しかったのである!
会話はたかだか「はいどうぞ」「ありがとう」みたいなものだったのだが、まるで空を飛べたダンボのように「普通に話せるって素敵!」とほんわかと幸せな気分に包まれて静かに有頂天な田舎娘。
そのときは通じた気がしたのだ、たしかに何かが。

 その後不思議と、こんな時にこんな場所で?というようなところでたびたび遭遇するようになる。一時期はほとんどのライブ会場でも顔を合わせた。これってひょっとして「運命」??(キャー!)
 しかし、やっぱり元の木阿弥。明らかに至近距離にいるのにニッコリ普通に挨拶もできず、それどころか目が合っているのに会釈もしない。どう考えても感じ悪い女、そしてまた自己嫌悪。結局後にも先にも言葉を交わしたのはあの日だけ。なんたって知っているのは名前と学校だけで、どこに住んでいるかも知らないのだ。会えるとしたら次の偶然を祈るしかない。

 その頃の私は、何となく自分にはこの世界への参加権がなくて、いつも世界を窓の外側から覗き込んでいるかのような感じがしていた(マッチ売り少女みたいな)。
 ある夜、彼を乗せてホームを去っていく山手線を見送りながら(やっぱり今日もだめだった)、「この次に出会ったら、どこでどういう状況であろうと自分から話かけてみよう。たとえ嫌われていたとしても。」と心に誓った。思い切って世界の中に参加してみよう、と。

 しかしそう決めた途端に、ぱったりと偶然は起こらなくなってしまった。その後、二度と彼と出会うことはなかった。ぐずぐずしている間に、すでに運命の賞味期限は切れてしまっていたのだ。

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アルバムの最初の音が聞こえた瞬間、こんな忘れていたようなことや空気や匂いまでもが瞬時に鮮明に思い出されるなんて、まったく音楽ってすごい。
(そして私の人生、常に賞味期限を逃してしまっているような気がする今日この頃です。)

1967年 Electra Recordsより発表。「ハートに火をつけて」ほかヒット曲入りデビューアルバム。
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by chiori66 | 2004-05-10 02:10 | 今日の1枚


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