2006年 03月 27日

『マイ・アーキテクト』を観る。

a0011442_0552436.jpg現在東京で上映中の映画『マイ・アーキテクト』を観る。
札幌の上映予定がないかもということで、アメリカの字幕なしDVDをとりあえず観よう会。

この映画は、アメリカの現代建築の巨匠ルイス・カーンの実の息子であるこの映画の監督が、父親の生涯と建築を追いながら「父親=ルイス・カーンとは誰だったのか」を探すドキュメンタリ−・ロードムービー。



この映画の大前提であり最も衝撃的な事実は、建築家としてなかば神格化されているルイス・カーンには3つの家庭、つまり妻と愛人と愛人の間にそれぞれ子供がいて、第3の女性の息子であるこの監督、ナサニエルは社会的には隠し子のような存在だったということ。
出張先からの帰路の駅のトイレで心臓発作で突然他界した父。
カーン60代の息子であり終生一緒に暮らすことはなかった「僕」にとって、11才で別れた父親は未知の存在。

カーンの手がけた建築を一つ一つ訪ね歩きながら、生前の彼を知る友人・知人・クライアント、初めて会う親戚や、さらにはカーンの最初の愛人や2人の異母姉妹といった人々と出会い(もちろん実の母も登場)、それぞれの目を通した人間としての父親像を探して行く人間ドラマ。
観客にとってもそれは一人の人間ルイス・カーンを一緒に発見する旅。

「愛人の息子」なんていう言い方で片づけてしまうとなんとも残酷だけど、どんな状況であっても自分にとって父親は父親なんだよね。女癖の悪い有名人の話…では決してないことは明らか。女性たちが回想する時の毅然とした強さと優しさから感じられるのは、その時その時真実だったんだろうということ。

家庭人としては複雑で矛盾に満ちた人物であったであろうけれど、それを超える何かが建築や彼を知る人の言葉を通じて感じられます。
淡々とした語り口ながら、それぞれの登場人物の言葉がぐっと胸にきます。

下手に語るよりも、実際に観てみて下さい。お薦めです。泣けます。
建築に興味のない人もぜひ。
(札幌でも夏以降にシアター・キノで公開が決まったそうです!)


写真でしか知らないカーンの建築(しかも大概どれもがとてもシンボリックなアングルの)がリアルな目線の空間として観られるのもこの映画の魅力。
それから建築界の有名人が全然カリスマ的じゃなくてフツーのおじさん風に語っているところも見どころです。
でも映画と人の力に引き込まれて、実は途中から建築はわりとどうでもよくなっちゃったんだけど。

(ちなみに、去年他界したフィリップ・ジョンソンが
「Le Corbusier was mean(mean=卑劣とか意地悪とかケチとかそういう感じ)」と語るところと、バングラディッシュで出会った市民が「ああ知ってるよ!ルイス…バラガンだろ?!(あ、ちがった)」…みたいなシーンが笑えました。普通の人の口からバラガンがすぐ出てくるバングラディッシュって国も意外とすごいけど。字幕がなかったので不確かですが…)


●東京ではQ-AXシネマで上映中
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by chiori66 | 2006-03-27 23:52 | 今日の1枚


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