2008年 06月 19日
先日東京からの知人の訪問があり、丁度いいタイミングなので、ひさびさに札幌中島公園でやっている「おまつり」に出てみた。 「おまつり」とは、要は北海道神宮祭の縁日のことだが、神宮とはまったくかけ離れた公園で、大きな公園をぐるり一周するかたちに縁日が連なっている。 その様子、まさしく全国テキ屋サミット。 一番のハイライトエリアがここ。 私の子供の頃はもっと規模が大きかった。サーカスも毎年どーんと2テントで開催。見世物小屋2つ、お化け屋敷も2つ、オートバイサーカス1つ。 中でも見世物小屋の「へび女」「牛男牛女」などの看板は、昭和30年代的な小松崎茂調タッチがおどろおどろしくも魅惑的で、こわい見たい見たくない…と幼心をぐわしっと鷲掴みにして離さない魔的な吸引力を持っていたのだった。 (同じ一座を新宿花園神社で見かけたときは、ロケーション的に更にオドロ度が5割増。) お化け屋敷と見世物小屋とサーカステントに囲まれた広場の真ん中を通過する時の、ハンドマイクによる口上合戦の煽動、高揚した人混み、妖しくも恐怖感をそそるビジュアル、オートバイサーカスの爆音… 恐い。子供には恐すぎる。だけど近寄ってみたい、見てみたい… …という、緊迫感を煽る異常な空間で、目眩するようなかつての興奮を追体験してみたい思いもあり、おまつりに行けば必ずチェックを怠らないのだが、 今年はなんか違う。 爆音も煽動も相変わらずだが、まず最盛期に比べ圧倒的に小屋の数が少ない。もうとっくの昔にサーカスはやってこなくなってしまった。幼い私の恐怖の中心だった小松崎茂調イラストの見世物小屋も見当たらない。 見世物小屋は、エログロナンセンスか天井桟敷調の平成バージョンのアングラテイストになっていたし、お化け屋敷の「恐さ」の作りにはぞんざいさが気になった。 まぁそれはそれ、時代の流れとして全く異論はないんだけど。でも大事な物が決定的に欠落しているような気がする…。 足りないのだ。まがまがしさが、不吉さが。 ひとことで言えば「不幸さ」が! 呼び込みのお兄さんも踊り子さんも、「売り飛ばされてドサまわり」とか「酢を飲まされて芸を仕込まれ」とか「親の因果が子に報い」とか… そういう運命的な底知れぬ不幸の暗さがみじんも感じられないのよ。 休み時間に携帯メール打ってたり、コンビニのプリン食べてたりするんだろうなぁ…と容易に想像できたり。楽屋裏が見えちゃった途端、恐怖のオーラがさーっと消えていく…。 「あ、そうか、昭和は終わったんだ…」 平成も20年も経って初めてヴィヴィッドに感じた今年のおまつりであった。 また一つ世の中から謎が失われていく…。それとも私が大人になっちゃった? ああ、ちょっと寂しいというかなんというか。 (そういえばこれってレイ・ブラッドベリお得意のテーマね。古今東西、子供はおまつりに弱いものなのよ。)
by chiori66
| 2008-06-19 00:33
| つれづれ日々の泡
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