2005年 12月 23日
かなり高齢なフィンランド人の知り合いがいて、名をヨルマという。妻の名はマータ。 ヨルマとマータはそもそもうちの親の友人なのだが、私から見るとおじいちゃんおばあちゃんのような存在だ。 北欧の絵本なんかに赤い三角帽をかぶった小人の集団が出てくるけど、想像してほしい。あの中の、小っちゃくてころころに太っている気のいいおばさんがマータ。背が高くて痩せていてちょっと気むずかしそうな顔をしているのがヨルマ。 まるっきりおとぎ話にでてくる老夫婦って感じだ。 旅好きの二人は、ときどき世界のとんでもない所から絵はがきをよこす。 よく見ると「QE2より」と書かれている。QE2とはクイーン・エリザベス2世号の略だ。実は結構な金持ちらしいヨルマとマータは、すでに地球を何周分かぐるぐる船旅しているらしい。(でも着ているバーバーリーのコートはよれよれな上に袖がほつれて浮浪者みたい。) 数年前にラハティという町にある自宅に泊めてもらった。 カビ臭いような古めかしい調度品の置いてあるアパートメントのダイニングで、昨夏森で採って来たというきのこのスープを食べて、やっぱり森で採って来たなんとかベリーに牛乳をかけたのを食べた。 ちなみに、『ポッカじっくりコトコト煮込んだスープ ザクザクきのこ』は、ヨルマんちのスープと同じ味がする。 翌日も特に何もすることがないので、ヨルマの半生(ってか全生に近いけど)の話を聞きつつ、朝からラハティの町をお散歩デートする。老人と東洋人という変な二人で。 ヨルマの生家の跡地を見に行ったり、子供の頃の思い出や、若い頃のアメリカ生活、帰国してから始めた商売の話、サマーハウスのこと、その他色々。 「どうしてQE2にそんなに乗れるの?」と青空市場でアイス食べながら訊いてみたら、どうやら50年以上も前に買ったNOKIA(当時はゴム長靴とか作ってた会社らしい)の株をいっぱい持っていて、携帯電話で高騰したその株の配当が入るそうな。 フィンランドの田舎にはそういう人が結構いるんだって。 老人とハイテク株。へぇ〜、マンガみたいな話だが。 ラハティのバス停でお別れをいう段になった。 がっちりハグしてから、小さく遠くなって行くヨルマにバスの窓から手を振ったら、ちょっと目頭が熱くなった。 ヨルマ、さようなら。もうこれで生涯のお別れかも… だってその時、ヨルマ86才。それが今から4年前。 その後、QE2からの葉書はない。 「きっともうヨルマ死んだよね…」 遠くを吹く風を思うように、クリスマスが近くなると懐かしいような淋しいような気持ちでヨルマを思い出す。 そしたら、昨日1通のクリスマスカードが届いた。 老人特有の手の震えた文字で。 ・・・あ、ヨルマだ!! なんだ〜!ちょっとびっくりさせないでよー、 てっきり死んだかと思ってたよー!!(勝手に殺して悪いけど) あはははは、生きてたんだー。どうせだからもう120才まで生きててよー。 最近いちばん嬉しかったこと。マジ、嬉しかったです。
by chiori66
| 2005-12-23 00:31
| つれづれ日々の泡
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